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法解釈の言語哲学:クリプキから根元的規約主義へ

On Justifiability of Legal Interpretation: from S. Kripke to Radical Conventionalism

勁草書房、2006年、3000円+税

規則に従う・意味を知る・解釈するといった法解釈にまつわる行為の性質について、後期ウィトゲンシュタインの言語哲学を元に考察した。原論文「規則とその意味:法解釈の性質に関する基礎理論」(国家学会雑誌・2003〜2004に5回連載)により、日本法哲学会奨励賞(2004年論文部門)を受賞。

法とは……根元的な不確定性の中において客観性を作り出すシステムとして理解されるべきなのだ。法が扱い、あるいは積極的に作り出す現実とは、世界の物理的な・自然な・あるいは本質的な存在と照らし合わせてその正否を判断されるようなものではない。……法解釈とは、どこか世界に我々の行為と離れて存在する正解を見つけ出すための手法ではなく、法的な現実を作り出す我々の行為なのである。(はじめに)

目次

はじめに
第1章 「法解釈」とは何か
1.1 問題の所在
1.2 法的判断モデル
1.3 法的判断モデルへの批判
1.3.1 法解釈論争
1.3.1.1 問題提起とその整理
1.3.1.2 通説的整理への疑問
1.3.2 法的判断は必然的か?:三つの挑戦
1.4 法的判断の定位
1.4.1 法的判断の領域
1.4.2 井上達夫の法命題概念
1.4.2.1 法命題の定位
1.4.2.2 ウィトゲンシュタインの「石工の言語」
1.4.2.3 遂行分析による批判


第2章 「解釈」とは何か
2.1 解釈の規約主義モデル
2.1.1 完全に厳格な規約主義
2.1.2 限定的規約主義
2.1.3 オースティンの言語行為論
2.1.3.1 行動主義と情緒説
2.1.3.2 言語行為論
2.2 意味は解釈により示される:ドゥウォーキンとフィッシュ
2.2.1 ドゥウォーキンの構成的解釈
2.2.1.1 解釈の類型論
2.2.1.2 解釈と導出の関係
2.2.2 構成的解釈の問題点
2.2.2.1 テクストの範囲はどう定めるのか
2.2.2.2 整合性は独立か
2.2.2.3 「最善」とはどういう意味か
2.2.3 フィッシュの解釈共同体理論
2.2.3.1 解釈共同体理論の目的
2.2.3.2 説得としての議論
2.2.4 解釈共同体理論の問題点
2.2.4.1 「解釈共同体」とはどのようなものか
2.2.4.2 解釈はどのような基準で選択されるか
2.2.4.3 基礎付け関係と懐疑論

第3章 「解釈」と実践の探求
3.1 クリプキの「懐疑的パラドックス」
3.1.1 パラドックスの提示
3.1.2 懐疑的パラドックスの射程
3.1.2.1 ウィトゲンシュタイン理解としてのクリプキ
3.1.2.2 井上達夫の定位とその失敗
3.1.2.3 ビックスの二分法とその失敗
3.1.2.4 クリプキ自身の「懐疑的解決」
3.2 意味は実践の中に示される:パターソンとヤブロン
3.2.1 ヤブロンの懐疑的解決
3.2.1.1 ドゥウォーキンのプラグマティズム像批判
3.2.1.2 法における懐疑的解決
3.2.2 パターソンの様式理論
3.2.2.1 法におけるポストモダニズム
3.2.2.2 ボビットの様式理論と論証の構造
3.3 懐疑的解決の問題点
3.3.1 懐疑的解決の限界
3.3.1.1 「共同体によるチェック」は可能なのか
3.3.1.2 「一致している」とはどういうことか
3.3.1.3 不可視の基礎付け主義
3.3.2 懐疑的パラドックスの前提
3.4 「懐疑的パラドックス」と法理論
3.4.1 解釈理論の問題点
3.4.1.1 導出の不確定性をどう扱うか
3.4.1.2 対審構造はなぜ必要なのか
3.4.2 実践理論の問題点
3.4.2.1 法的議論はなぜ必要なのか
3.4.2.2 法全体はどうやって正当化されるのか
3.4.2.3 論証と様式の一致はどうやって判定されるのか
3.5 正当化の理論
3.5.1 規範は存在しない:リアリズム法学
3.5.1.1 リアリズムによる批判
3.5.1.2 何が実在するのか?
3.5.1.3 遡及性の問題
3.5.2 普遍的文脈主義
3.5.2.1 対話法的正当化理論
3.5.2.2 規制理念としての普遍的原理
3.5.3 脱構築としての正義
3.5.3.1 デリダ、脱構築としての正義
3.5.3.2 和田仁孝のポストモダニズム
3.5.4 普遍信仰と普遍志向

第4章 規範物語りと意味
4.1 二つの懐疑論
4.1.1 懐疑論と生活形式
4.1.2 基盤の循環性
4.2 根元的規約主義
4.2.1 キャロルのパラドックス
4.2.2 論証による意味制作
4.3 正当性に関するデカルト的地平
4.3.1 否定主導語としての「正常」
4.3.2 日常言語ゲームと言語習得ゲーム
4.3.2.1 規則実践と「我々」
4.3.2.2 命題の規範的働き
4.4 意味の制作理論
4.4.1 過去と歴史の制作:物語り
4.4.1.1 大森荘蔵の想起過去説
4.4.1.2 ダントの物語文概念
4.4.1.3 過去物語りと歴史物語り
4.4.2 意味の制作:規範物語り
4.4.2.1 規範物語り
4.4.2.2 意味制作のモデル
4.4.3 法における意味と解釈
4.4.3.1 物語りとしての解釈
4.4.3.2 三人称的記述としての法
4.4.3.3 裁判制度の意味


第5章 解釈と法
5.1 補足と展望
5.1.1 私と我々のあいだ
5.1.2 言語と実践的能力
5.1.3 自由とコミュニケーション
5.1.4 批判可能性はどうなるのか?
5.1.4.1 フィッシュの応答とその失敗
5.1.4.2 第三者への援助要請
5.2 運動としての法に向けて
5.2.1 運動としての法
5.2.2 法命題の意味制作


おわりに