KIPS-Keio Initiatives for Political Science グローバル化時代の政治学総合研究拠点形成慶應義塾大学大学院法学研究科政治学専攻
魅力ある大学院教育イニシアティブ

KIPSキャリアアップサポートセミナー

KIPSでは、2007年6月22日に、大学院生のキャリア形成を支援することを目的としたキャリアアップサポートセミナーを開催しました。以下はセミナーの報告概要です。

 

■□キャリアアップサポートセミナーの内容□■ 

ご挨拶 拠点リーダー:田中俊郎

第一部 公募で就職する
 「面接と模擬授業」  李泳采(恵泉女学園大学専任講師)

第二部 大学院生から大学教員へ
 「博士論文執筆、著書刊行、有期教員を経て」  細谷雄一(法学研究科准教授)

キャリアアップサポートセミナー 李先生
キャリアアップサポートセミナーの風景


第一部 公募で就職する

 

「面接と模擬授業」(恵泉女学園大学専任講師:李泳采)


応募書類および面接に関する事前準備にあたっては、応募先の大学の特徴を把握することが大切である。大学が教員を選ぶのは、いくつか理由があるからである。その大学がなぜ教員を募集しているのか(定年退職者の後任人事、学生の定員オーバーに伴う新規採用、新設学科の設立など)について把握し、それに合わせて応募するのがよいと思う。

私の場合、履歴書や研究業績書には、社会活動や大学内の研究会のメンバーであったことも記入した。通常、研究業績書には、3点以上の公刊論文を書くことになっているが、無名の雑誌に掲載された論文であっても、実績として書いたほうがよい。その他にも、非常勤講師などの経験、つまり「教歴」があるかどうかが、重要なポイントである。

書類審査を突破したら、次に行われる面接と模擬講義ですべてが決まると言っても過言ではない。特に、模擬講義は重要である。面接の際、一学期分(14回分)の講義計画を提出するが、その際、講義の内容がわかるように、講義のタイトルに加えて、講義内容に関するキーワード(5〜6種類)を記しておいた。面接で聞かれたのは、これまでに書いた論文や今後の研究計画に対する質問であったが、それ以外にも、学生指導に関する質問があった。また、自分は留学生なため、留学生がなぜ日本で就職するのかといった質問もされた。ちなみにこの質問に対しては、日本人よりも外国人が教えることが有用な点などを強調した。 

模擬講義では、自分の行った海外調査の結果に基づく事例をあげて、具体的なテーマがわかるようにした。その際、海外で研究調査をしていることをアピールした。また、学部生が理解できる内容であるかが重要なので、キーワードの説明などポイントを明確にするよう心がけた。学生が飽きないように、学生との質疑応答の時間を少し入れて、工夫した。模擬講義の練習を事前に3回行い、後輩に聞いてもらった。わかりにくい部分を指摘してもらい、時間配分を調整した。繰り返し練習したため、当日は余裕をもって、臨むことができた。

最後に、大学院生活の中で行った就職準備について触れたい。単位取得まではできるが、博士論文提出までは、なかなか難しい。しかし、国際会議などでの実績を積み、英語で論文を執筆したことは、就職時に大きなアピールになったと思う。また、自分の専門で就職できるわけではないので、自分の研究テーマ以外の分野についても普段から準備し、先生や他の研究者とのネットワークを築いておくことが大切である。こうした準備を行っておけば、実際に面接を受ける時、自分は専門以外の科目も教えられるということをアピールできると思う。

 

キャリアアップサポートセミナー 細谷先生
キャリアアップサポートセミナーの風景

第二部 大学院生から大学教員へ

 

「博士論文執筆、著書刊行、有期教員を経て」(法学研究科准教授:細谷雄一)


今から10年前の1997年に、慶応大学大学院博士課程に進学した。その後3年間博士課程に在籍し、2年間は北海道大学、その後公募で2年間、敬愛大学に勤務した。その間、落ちた公募も10カ所くらいあった。いろいろと挫折もあった中で、生き延びてきた。
 公募で就職するのはなかなか難しい。では、これから就職するプロセスのなかで何が必要なのか、優秀な研究者が就職で評価されないのはなぜかということについて話したい。 
まずは、応募者自身が自分は優秀であるということを客観的に証明することが必要である。例えば、博士号の審査に合格している、日本学術振興会の特別研究員に採用されている、受賞歴、学会誌の査読にいくつかの論文が通っていること等により、専門の人に評価されていることを証明できることが、重要となる。審査できるものは、多ければ多いほどよい。公募をするということは、その分野の専門家がいないということなので、審査の段階では、自分の研究を他分野の専門家が読むことになる。そのため、上にあげたような、客観的な証明が重要になる。
 また、自分に能力があっても、公募が純粋な審査でないために、正当に評価さないこともある。性別(例えば、どうしても女性を採用したい)、年齢構成(例えば、30代を採用したい、大学院指導ができる50〜60代を採用したいなど)、専攻分野(例えば、「国際政治」と書かれていても「アジア政治専門家」を選びたいなど)、内々にすでに学内内定者がある場合など、大学側の思惑は様々である。したがって、とにかく応募し続けることが重要である。
 また、博士論文を書きあげるということも重要である。現在、大学院生は非常に忙しく、自分の研究に使える時間が少ない。しかし、公募の際、応募者の三分の一から二分の一が博士号を取得している。そのため、博士号を持っていないと書類審査で除外されることも多い。嫌なことがあっても耐え忍んで頑張れば、必ず誰かが見守ってくれていると考えて、頑張ってほしい。

 

質疑応答

Q:教員になるまでの期間は、生活費はどうまかなっていたのか。非常勤講師では生活が厳しいのではないか。

A(李):留学生は時間講師の期間が長くなるのは不利なので、私の場合は、在学期間を延長し、奨学金や研究費を得るようにした。

A(細谷):1年でも早く専任のポストに就けるように、早期に博士論文を書くことに集中し、アルバイトを抑えていた。また、アルバイトも、可能な限り専門的な研究に有益なものを選ぶようにした。例えば、塾講師などは、人前で話すよいトレーニングになり、学会報告などに役に立った。

Q:今、慶應義塾大学でポストは空いているのか?

A(細谷):私には、わからない。他方で、ポストという場合に色々な書類があり、RAやTA、研究員などのポストも考慮に入れることができる。たいていの場合は、有期の講師や、助手、COE研究員や、研究所の研究員など、色々な段階を踏んで専任教員となっている。大学院生の中から、専任教員を直接採用するということは、それほど多くはない。また、教歴があるほうが有利である。是非、一つ一つステップを踏んで、目指す方向へと進んで欲しいと思う。